はじめに

株式でバリュー型投資を行う場合、現在の株価の妥当性を検討して行います。株価の理論値を出して、現在の株価がその理論値からどの程度乖離しているかを評価するのです。企業の利益(最終利益見込みだったり経常利益見込みだったり)と発行株数から1株当たりの利益見込みを出し(EPS)、それに平均的な株価収益倍率(市場平均やその業界の平均)を掛けたものを理論的な株価と見なして検討することが多いです。もちろん将来の収益見通しが変わると理論株価も変わります。企業の業績見通しの発表で株価が大きく振れますがこの計算値を目途にまず振れる場合が多いです。(もっと厳密にやる場合は将来発生する見込み利益を全て現在価値に換算して足し上げますが話がややこしくなるので割愛)

一方FX。通貨ペアレートの妥当性を評価するのは非常に難しいです。尺度となる理論値を出すことが難しいためです。理論株価と同じようにGDP予測値と通貨発行量から算出しようとしても、そもそもGDPが

GDP = 民需 + 政府支出 + 貿易収支

であり、貿易収支がこれから算出しようとするレート(主に米ドルとのレート)に大きく左右されますのでパラドックスに陥ってしまいます。日本はGDPに占める内需が大きいので貿易収支の誤差は無視できそうですが、貿易依存の高い国の通貨ですとレートによる誤差が大きくなりそうですのでまだ試行錯誤していません(実験的にせよここいら辺で何かしら成果が出ましたら当ブログ記事で発表します)。

結局通貨レートの理論値は現在のものからレート変動に関与するイベントの影響度合いで現在レートから推定するしかないというのが現状です。例えるなら、株価はGPSデータから計算で絶対的な現在地を割り出せるけど、通貨レートはある地点を出発点としてジャイロセンサーや加速度センサーのデータから相対的に現在地を割り出すしかないって感じですね。直接割り出せないのでどうしても誤差が大きくなります。誤差を少なくするには複数の違う種類の指標を組み合わせて精度を上げていくしかありません。

そこで今回はその相対的に割り出すための一つの指標となるかもしれない指数の算出を試みることにしました。

安値戻り率

前述の通り通貨ペアレートの妥当性を評価するには複数の指数を組み合わせるしかないですが、その一つとなるかもしれない指数を提案します。安値戻り率です。安値戻り率は以下の計算式で算出します。

安値戻り率 = [(現在のレート – 期間安値) / (期間高値 – 期間安値)] x 100

期間安値を『0』、期間高値を『100』とした百分率で、現在のレートが期間安値から期間高値に対してどれくらい戻しているかを表す指数です。半値戻しで50%で、それよりも高いと期間高値に近いので『割高』、それよも低いと期間安値に近いので『割安』と判断します。株式にも似た指数があったような気もしますが・・・

今回は直近約一年の期間高値と期間安値を元にした安値戻り率を算出してみます。本来であればやはり基軸通貨であるUSDを基準として算出すべきなのでしょうが、レートが日本円やメキシコペソのように1USD基準となっているものと、ユーロや英ポンドのように相手通貨基準(1EURや1GBP当たり何ドル)となっているものがあるので比較がややこしいのです。どちらかのパターンを全て逆数をとって同じ基準にすれば同じ土俵で比較できますがレートが馴染みのない数字となってしまって違和感が出ます。ということで基準を我らが日本円にすることとしました。クロス円はほぼ全ての通貨ペアで相手通貨基準となっていますので(通貨ペア表記で右側に書かれます)もの凄く都合がよいのです。

調査期間:2018年6月1日~2019年5月24日
レートデータ:みんなのFX Bid値
対象通貨:USD / EUR / GBP / CHF / AUD / CAD / NZD / MXN / TRY / ZAR の10通貨のクロス円

調査結果

クロス円での各通貨の安値戻り率をまとめたのが以下の表になります。安値戻り率の降順でソートしています。

現在思いのほか日本円が強いので、メキシコペソ以外は軒並み50%を下回っています。日本円強すぎです(苦笑

問題児のトルコリラは完全無視するとすると、スイスフラン、ユーロ、ニュージーランドドルが20%台と期間安値からの戻りが悪く、1年間で見た場合対円でかなりの割安ゾーンに入っていると考えることができます。中・長期的に保有するのであればこれらの通貨が最初の有力候補になるかも。メキシコペソはちょっと割高ですかね。

結果考察

でもね、数字というのは非常に便利で如何にも客観的な事実を示しているように見えますが、数字をどう読み取るか、その裏に隠された事象をどう読み取るかは人間の役目なんですよね。前提条件に隠された紛れファクターで修正する必要があるかもしれません。このデータをそのまま信用して貰ってもいいのですが、僕なら多分そのまま使わないですね。例えば調査期間中に紛れが入り込む余地がなかったかと考えると・・・、ありましたよね?そう!2019年1月3日、朝7時から始まった
フラッシュクラッシュ!

フラッシュクラッシュの時を思い返してみて下さい。対クロス円でほとんどの通貨が軒並み激しく下落しましたが、特に大きく下落して強制ロスカット祭りとなって、売りが売りを呼んだのが豪ドルでした。有名YoutuberのJ○Nさんも強制ロスカット喰らってましたね(苦笑。前に『メキシコペソって安全な通貨なの?』の記事で『期間高値/安値率』を定義して計算結果を載せましたが、あのデータで違和感のあるデータありませんでしたか?豪ドルの期間高値/安値率が高金利通貨のメキシコペソなみに高くて違和感があったのは計算した僕自身でした。今回の安値戻り率でも豪ドルの戻り率が高いなぁと思い違和感を感じています。この2つの違和感を合わせると、
豪ドルの期間安値が安過ぎる
のではないかという仮説が立ちます。調べると豪ドルの期間安値はフラッシュクラッシュの時の瞬間的なものだと分かりました。

仮説を検証してみましょう。豪ドルには相関関係の強い通貨が存在します。同じオセアニアの通貨、ニュージーランドドルです。もし、フラッシュクラッシュの時の豪ドルの下げが強制ロスカット祭りによる過度に下げ過ぎたもので、本来はニュージーランドドルと同程度の下げで収まるべきだったとすると、期間安値は70.493円ではなく74.146円となっていたはずです。豪ドルは3円60銭以上下げ過ぎた感じ。安値戻り率を期間安値を74.146円として計算しなおした結果が以下の表になります。

仮説に基づいた計算値なのでその信憑性は保証できません。でも僕はこちらの方が違和感が小さいですね。現在の円高は米中の新冷戦によるところが大きく、減速が懸念される中国経済と結びつきが強い豪ドルが一番安値圏にいる方がしっくりします。結果として今一番割安な通貨は豪ドルではないかと。ただ豪ドルを買い推奨している訳ではありませんので悪しからず。

信じるか信じないかはあなた次第!笑

トレードは自己責任で!