はじめに

以前の『メキシコペソって安全な通貨なの?』と『レートの妥当性を考えてみる』の記事で、『期間高値/安値率』と『期間安値戻り率』を定義して、『期間高値/安値率』から通貨ペアの危険性を、『期間安値戻り率』から通貨ペアの割安度合いを考えてみました。特にこれら2つを定期的に提供しているサイトやブログ記事がないのをいいことに、毎月定期的にデータを更新していこうかと思います。

当記事の目的はこれからFXでポジションを取ろうとしている人に、通貨の危険度(ボラタリティー)と割安・割高の情報を提供することにあります。ボラタリティーの高い通貨はレバレッジを低めにすることを一考下さい。また割安な通貨でのショートポジション、割高な通貨での買いポジションはより慎重に行ってください。

月初は別の企画記事があるので月初めから少し遅れての更新になる模様

通貨の危険性(期間高値/安値率)

通貨の危険性とは何でしょう。FXにおいて最も気を付けなければならないのが強制ロスカット。強制ロスカットラインは口座の証拠金残と保有ロット数、つまりレバレッジでそのレベルが変わってきますが、同じレバレッジでポジションを取るのであれば通貨の暴れ具合、つまり通貨のボラタリティーでロスカットされやすい、されにくいが決まるはずです。

そこで通貨のボラタリティーを『期間高値/安値率』で判断します。期間高値/安値率とは、期間安値を基準として期間高値がどの程度上にあるのかを百分率で表す指数です。例えば期間安値が100円、期間高値が120円の場合、期間高値/安値率は20%となります。この期間高値/安値率が高ければ高いほど高値と安値の乖離が大きくボラが高くて危険な通貨と見なすことができます。

期間高値/安値率 = [(期間高値)/(期間安値)-1] x 100

期間は自由に取ることができますが、直近約1年間とします。尚、本来であればクロス円で調べるのではなく、世界の基軸通貨であるUSDを基準としたドルストレートで比較すべきかと思いますが、調べるツールとしてみんなのFXを使うため対象通貨の全ての通貨ペアがあるクロス円で調べることにしました。

調査期間:2018年6月1日~2019年6月07日
レートデータ:みんなのFX Bid値
対象通貨:USD / EUR / GBP / CHF / AUD / CAD / NZD / MXN / TRY / ZAR の10通貨のクロス円

通貨の割安度(期間安値戻り率)

通貨の割安度を検討するための1つの指数として『期間安値戻り率』を提唱します。期間安値戻り率とは、期間安値を『0』、期間高値を『100』とした百分率で、現在のレートが期間安値から期間高値に対してどれくらい戻しているかを表す指数です。半値戻しで50%で、それよりも高いと期間高値に近いので『割高』、それよも低いと期間安値に近いので『割安』と判断します。

期間安値戻り率は以下の計算式で算出します。

期間安値戻り率 = [(現在のレート – 期間安値) / (期間高値 – 期間安値)] x 100

今回は期間高値安値率と同様に直近約1年の期間高値と期間安値を元にした期間安値戻り率を算出してみます。

本来であればやはり基軸通貨であるUSDを基準として算出すべきなのでしょうが、レートが日本円やメキシコペソのように1USD基準となっているものと、ユーロや英ポンドのように相手通貨基準(1EURや1GBP当たり何ドル)となっているものがあるので比較がややこしくなります。どちらかのパターンを全て逆数をとって同じ基準にすれば同じ土俵で比較できますがレートが馴染みのない数字となってしまって違和感が出てしまいます。ということで基準を我らが日本円にすることとしました。クロス円はほぼ全ての通貨ペアで相手通貨基準となっていますので(通貨ペア表記で右側に書かれます)もの凄く都合がよいのです。

調査期間:2018年6月1日~2019年6月07日
レートデータ:みんなのFX Bid値
現在のレート:2019年6月07日終値
対象通貨:USD / EUR / GBP / CHF / AUD / CAD / NZD / MXN / TRY / ZAR の10通貨のクロス円

結果及び考察(通貨の危険性)

先ずは通貨の危険性、ボラタリティーに関する期間高値/安値率の結果です。

トルコリラだけチート過ぎるボラタリティーです。他の通貨と一緒に考察していいかどうかさえ疑われるレベル。仮想通貨並み。そう、トルコリラは仮想通貨だったんです!

トルコリラを除くと、南アランド、豪ドル、メキシコペソと続きます。やはり高金利通貨は上位にきますね。豪ドルは今は高金利通貨ではないですが、2019年1月3日のフラッシュクラッシュで強制ロスカットのぶん投げ祭りが酷かったので期間安値が低くなり過ぎているかもしれません。必要に応じて補正をかけて下さい(NZドルと同程度と見なしたりとか)。

ブレグジットの話題が出る度に乱高下している印象のある『殺人通貨』こと英ポンドですが、実はそれほどボラタリティーは高くはありません。はっきり言って普通です。期間高値/安値率だけから判断するとそれ程恐ろしい通貨ということにはなりません。高値と安値の値幅は確かに約19円(1900pips)と調べた通貨の中で一番広いのですが、レートが高いので率にするとカナダドルの下になります。

やっぱり米ドルはボラ小さいですねぇ。予想通りと言えばそうなんですが。中国元はトルコリラとは逆な意味で異次元なんですが・・・、必要があればデータに追加します。

結果をまとめますと

英ポンドの危険度は普通
ポンドより新興国通貨の方が遥かに危険
トルコリラは仮想通貨だった

結果及び考察(通貨の割安度)

次に通貨の割安度、期間安値戻り率の結果です。

前回調べた時は期間安値戻り率で50%を超えている通貨が2つありました。メキシコペソと米ドルです。ただどちらもメキシコペソ追加関税ショックの時に大きく下落したので今回は50%を越える通貨は無くなってしまいました。っていうか、強すぎだよ、日本円。

全て50%を下回っているのでどれも割安圏と言えば割安圏なのですが、割安な中でもカナダドルが一番戻しているという結果となりました。トルコリラもここでは頑張ってる風に見えます。が、ただ単に期間安値が低過ぎるからというのが正直なところですかね。この期間安値は勿論、2018年8月10日のトルコショックの時のものです。

一番戻していないのが南アランドで現在も絶賛降下中ですね。先週の記事『スワップポイント運用に有利な通貨はどれ?(2019年6月)』と今回の結果を合わせて考えてみると、新興国通貨で一番手を出してはいけないのが南アフリカランドということが分かります。

南アランドはメキシコペソよりスワップポイント運用の予想利回りは小さいわ、ボラタリティー高いわ、戻り遅いわで素人さんに毛の生えた程度の人ではまず太刀打ちできないでしょう。玄人向けのマニアック通貨なんですね。トルコリラは全てを超越するエンターテイメント通貨ですから生暖かい眼で応援してあげて下さい。

おわりに

これからスウィングや中・長期的にポジションを取ろうとする時、本記事が参考になれば幸いです。

特に僕から強く言いたいのは、初心者や素人が安易にスワップポイントに惹かれて新興国の高金利通貨に手を出すのは危険だよってこと。新興国通貨はボラタリティーが高くて危険度高い通貨という認識を強く持って下さい。その危険な通貨をスワップポイント狙いで長期間保有する訳ですからね。資金管理はかなり重要です。素人さんと初心者さん向けは米ドルか中国元だと思いますよ。ただ中国元は米中の新冷戦でこれから先不安ですが・・・